2006年08月03日

英語で何を話すか、それが問題なのだ



英語ができさえすれば国際人だ。私が非国際人という言葉を発明したのは、こういう風潮に対する反発の気持ちがありました。

外国語なんて、極端な話専門家に任せておけばいいのです。言葉は手段であり、目的ではないのです。かつて非常に英語の堪能な総理大臣がおられましたが、その英語の技能と政治能力とは全く関係がなさそうに思えました。これについては、有名な伊勢雅臣さんのこのメルマガに語ってもらいましょう。

本講座を始めてからいただいたお便りの中で、次のようなものがあった。

昨年夏に米国へ短期留学した際に、英語が上手く話せないことよりも、話す内容、つまり、日本の事、国際問題、自分のアイデンティティについてしっかりと自分の言葉で語ることができなかったことに大変ショックを受けました。

過去の歴史的事実について知らなさ過ぎる、今日本で世界で起こっていることを『自分の』生きている世界のこととしてとらえ、自分の頭で考える、ということをしたい、と痛切に思いました。国際派日本人養成講座は、そんな私の想いに応えてくれるものです。

「英語の問題ではなく、話す内容の問題だ」との一節には、まさに我が意を得たりの感を持つ。

つまり大切なのは、文法がどうとか発音がどうとかという問題ではないのです。

どんなにめちゃくちゃな英語を操ろうが、相手にとって意味のあることであれば、耳を傾けてくれるのです。


国外にある日本企業に勤める現地従業員は、日本から来た駐在員がどんなに出鱈目な言葉を話そうが、必死に聴いて、片言の単語を手がかりにして、彼の言いたい事を探ろうとするのです。

つまり、それは彼らにとって意味のあることだから、そうしているのです。内容に意味があれば、どんな話し方をしようが、聴くのです。片言隻句すら聞き漏らすまいとするのです。


その代わり、どんなに流暢に、完璧に話そうが、内容に意味がなければ関心を示してもらえません。英語が上手といって感心されるのは非英語圏だけの話です。英語圏では、ネイティブの方が上手に決まってます。面白くも何ともありません。

また、どんなにエルビス・プレスリーについて熱く語ったとしても、プレスリーについてだったら、アメリカ人の方がよく知っているに決まってます。

そりゃあ宴会の余興としては面白いかもしれませんが、相手はわが国の首相にそんなことを期待していないですよ。

例えばどこか欧米以外の国の元首が、「美空ひばりが好きだった」とか言って物まねし出したらどうするんですか?嬉しいけどちょっと困っちゃうんじゃないですか?

しかし、多くの日本人は彼のことを笑えないと思いますよ。もっとも苦笑くらいはするでしょうが。


それは、今の日本にはとことん物の道理を突き詰めて、自分の意見として発表するような習慣がないからです。切羽詰ると、頓知でなんとか逃げようとする。あるいは、笑ってごまかす。

だから、好意的に考えればかの首相も、逃げたんだと思います。実は考えてなかったとは言えない。だから、笑いをとってその場を逃れたのだと思うのです。


(もっとも、その後の世界情勢を考えると・・・危険を察知してとっさに酔った振りをしたという可能性もないでもないのですが、それはさておき)


つまり、英語以前に、日本語の問題として、いざという時語るべき言葉を持たない。なぜなら、普段考えたことがないから。これは実に致命的なことだと思います。

総理大臣だけの問題じゃないと思います。多分、大部分はそうでしょう。

(小泉さんの言動についてはいろいろ批判も多いですが、ある意味、歴代首相の中で感性が一番、今日日の一般国民に近い首相だと思いますよ。そういう意味では、自分たちの鏡を見ているようです)


つまり、そもそも私たちが自らのアイデンティティを突き詰めて考えるということを怠って、徒にその時々の出来事だけを表面的に追求し続けるという態度に終始するならば、いつまでたっても他者に向けて語るべき言葉を持つことはできないでしょう。

私たちは、人に物を尋ねる前に、自らをもっとよく知らなければいけません。自分たちがどこから来て、どこへ行こうとしているのかを。

でもそれは、それほど難しいことではありません。ただ、ちょっとだけそういう習慣が途切れていただけの話です。日本人だけの中で暮らしているとわかりにくいかもしれませんが、外国人と付き合っていくためには必要なことです。


私たちは、地球市民などという抽象的なものにはなることはできません。私たちは、どこに住もうが何語を話そうが紛れもなく日本人なのです。

好むと好まざるとに関わらず、私たちは一人一人が日本代表なのです。後ろに見えない日の丸を背負っているのです。桜吹雪と富士山があるのです

日本人以外の人たちは、私たちの言動を通して、日本人、そして日本という国を見ているのです。迷惑な話と思うかもしれませんが、それが現実なのです。

つまり、いくら英語を流暢に話せても、自分の生まれ育った日本という国について語るべき何物も持たない人間には、国際人を名乗る資格などないのです。

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ご理解していただける皆様は、ぜひ。

この記事へのコメント
非国際人様

>外国語なんて、極端な話専門家に任せておけばいいのです。

そうです。複数原語が使えるかどうかは脳内のあるスイッチの機能に依存し、個体差がある。ただし、それはその個体の他の能力とは無関係で、偏に言語能力の問題に過ぎないとの研究結果を最近読みました。
英文を書け亡い方は私にご依頼ください。英会話ができない方は私の妻にご依頼ください。
それで皆さんは楽にそれぞれの役割を果たされ、我が家の家計は豊かになり、犬たちも幸せになるのであります(笑)。
Posted by Count_Basie_Band at 2006年08月09日 04:56
カウント・ベイシーバンドさま
あ、そうですか。専門家の方なのですね。これからお願いしようかな(笑)
・・・なんて、私の国では英語はほとんど通じません。もっぱらポルトガル語なんですが。

>複数原語が使えるかどうかは脳内のあるスイッチの機能に依存し、個体差がある。ただし、それはその個体の他の能力とは無関係で、偏に言語能力の問題に過ぎないとの研究結果を最近読みました。

なるほど。できないからって焦ったり絶望したりする必要はないのですね!できない努力をするより、専門家を雇ったほうがはるかに効率的かもしれません。
Posted by 非国際人 at 2006年08月09日 09:00
こと心5月に自分のブログに書いた記事で、本来TBすべきなのでしょうが、他のブログサービスへのTBは難しいのでCommentにします。
+++++++++++++
『国家の品格』の「英語より国語、漢字」で思い出した。私自身、ある雑誌に言語教育について書いたことがある。ディスクを検索したら残っていた。2003年9月だ。
*****************
 辞書を引けばわかる単語を高校入試だけのために暗記させられていたら私だって英語嫌いになっていたかもしれない。発語の裏で働く心の理解という外国語学習の一番面白い部分に時間とエネルギーを費やすことができなくなるからである。助動詞や前置詞、そして「be」や「have」は英和辞典を引いて理解できる言葉ではない。八百万(やおよろず)の神を信じてきた日本人など、自然信仰の太平洋民族には思いも寄らない感覚が働くのである。
 そんなことを理解しなくても、日本人が日本人として他の興味の持てる分野を学習したり、職業生活を送ったりするのに何の不自由もない。外国語が必要な場合があれば、その時だけ専門家を雇えばいいのである。だから学科試験を課す大学が必ず外国語を入試の必須科目にしている現状は許し難い。
 かといって、スポーツや芸術で高レベルにある高校生をフリーパスで大学に入学させるのも納得できない。
 「何げに」(正しくは「何げなく」)振り向いたら「バイクの男が女性を切りつける」(正しくは「女性に切りつける」)のが見え、「バイクは停車中の車に直撃」(正しくは「車を直撃」)したが、この直撃は「やむを負えない」(正しくは「やむを得ない」)というレベルの日本語では学習も職業生活もまともに行えないであろう。
 日本語の読み書きだけは入試の必須科目にして鍛える必要がある。
*****************
 私の時代、公立高校は知的障害がないかぎり誰でも入ることができた。その状況を背景にした文章である。高校入試を受ける必要がなかった幸運を懐かしんで書いた駄文である。
Posted by Count_Basie_Band_ at 2006年08月09日 09:47
カウント・ベイシーさん

あれれ?エキサイトからうちにトラックバック送れますよ・・・

それにしてもおっしゃる通りです。日本人にしか通用しない独善的な英文法を習得するために貴重な青春時代の時間を無駄にしているのですから。

コメントの下の方においておくのは余りにもったいないです。もっと大勢の人に読んでもらわなければ。
Posted by 非国際人 at 2006年08月10日 22:45
 目下のベストセラー(らしい)『国家の品格』を遅まきながら読みました。
 著者はアメリカとイギリスでも教えた数学の先生です。しかし英語の達人で日本文学にも造詣が深い方です。
 終身雇用と年功序列を高く評価し、「国民は決して成熟しない」と言い切るあたりでは拍手したくなります。
 そして「英語より国語と漢字」、小学生には「国語と算数」を問答無用で叩きこめと主張します。
「卑怯」を子供に教えろと主張します。理由なんかない。「卑怯は卑怯」なんだから、と。気持ちいいなぁ。
 そして日本人が英会話を苦手とし、TOEFLの成績がアジアでビリなのは日本語と英語が違いすぎることと英米の植民地にならなかったからだと説明されています。それは同感です。
 しかし「中高の英語教師のせいでもない」という御意見には納得できません。
 私は元、あるいは現役の中高の英語の先生に仕事を手伝って貰っていたことがあります。驚きました。基本5文型すら怪しく、「y」で終わる単語の語末に「s」や「d」を付ける場合の原則もご存じないのです。中高の先生でこのレベルなんですから小学校から英語を教えるなんて、冗談が過ぎますね。
 まして、高校を卒業してアメリカに留学する教え子の英文の推薦状を自分で書ける先生はどれだけいらっしゃるでしょうか。翻訳会社に依頼する先生が珍しくありません。
 大きな理由は、英文科卒でないと英語教員になれないシステムにあると私は見ています。英文科は英語の文学を学ぶ場所であって、現代実用英語の使い方は教えられないからです。英文科卒で現代英語を使いこなせる方々は、大学での研究とは別に、ご自分で学習なさったはずです。
 間違っていたらご指摘ください。
Posted by Count_Basie_Band at 2006年08月11日 04:52
『国家の品格』の「英語より国語、漢字」で思い出した。私自身、ある雑誌に言語教育について書いたことがある。ディスクを検索したら残っていた。2003年9月だ。
*****************
 辞書を引けばわかる単語を高校入試だけのために暗記させられていたら私だって英語嫌いになっていたかもしれない。発語の裏で働く心の理解という外国語学習の一番面白い部分に時間とエネルギーを費やすことができなくなるからである。助動詞や前置詞、そして「be」や「have」は英和辞典を引いて理解できる言葉ではない。八百万(やおよろず)の神を信じてきた日本人など、自然信仰の太平洋民族には思いも寄らない感覚が働くのである。
 そんなことを理解しなくても、日本人が日本人として他の興味の持てる分野を学習したり、職業生活を送ったりするのに何の不自由もない。外国語が必要な場合があれば、その時だけ専門家を雇えばいいのである。だから学科試験を課す大学が必ず外国語を入試の必須科目にしている現状は許し難い。
 かといって、スポーツや芸術で高レベルにある高校生をフリーパスで大学に入学させるのも納得できない。
 「何げに」(正しくは「何げなく」)振り向いたら「バイクの男が女性を切りつける」(正しくは「女性に切りつける」)のが見え、「バイクは停車中の車に直撃」(正しくは「車を直撃」)したが、この直撃は「やむを負えない」(正しくは「やむを得ない」)というレベルの日本語では学習も職業生活もまともに行えないであろう。
 日本語の読み書きだけは入試の必須科目にして鍛える必要がある。
*****************
 私の時代、公立高校は知的障害がないかぎり誰でも入ることができた。その状況を背景にした文章である。高校入試を受ける必要がなかった幸運を懐かしんで書いた駄文である。
Posted by Count_Basie_Band at 2006年08月11日 04:56
非国際人様

他のブログと勘違いしていました。

おだてに乗りやすいタチですので前後編をTBしました。
Posted by Count_Basie_Band at 2006年08月11日 04:59
やはり

http://blog.seesaa.jp/tb/21855231

画面での入力方法がわかりませんでした。
Posted by Count_Basie_Band at 2006年08月11日 08:42
カウント・ベイシーさん

まず、トラックバックアドレスを選択して、〔右クリック〕→〔コピー〕または〔編集〕→〔コピー〕と進みます。

それからエキサイトにログインし、自分の送りたい記事の編集画面に入ります。そこの下のほうにある、「トラックバックurl」と書いてある枠の中に、上でコピーしたアドレスを貼り付け、そのまま「送信」を押せば行くはず・・・ですが?

私のブログを練習代にしても構いません。重複したら削除しますので、どんどん送ってください。
Posted by 非国際人 at 2006年08月15日 10:47
お手数掛けました。
どうやらできたようです。
Posted by Count_Basie_Band at 2006年08月15日 13:30
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