2006年08月16日

不毛の地に知の果実が実るとき



前回書いた、表と裏の話ですが、この両者の緊張関係が成り立つためには、表がちゃんとしていなければならないわけですが、日本ではこれが壊滅状態なわけです。それは確かに、潰されたという側面もあったわけですけど、それ以上に、自滅という感もあります。

しかし、国民の知的レベルがこのままで推移するならば、立て直すのも容易ではないでしょう。

何が言いたいのかと申しますと、健全な表の勢力(まあつまり、普通のことを普通にやるということですが)を作って、維持していく努力を国も国民も怠っていたと思うのですよ。

確かに官僚組織とか、企業文化とか、労使協調路線の思想とか、戦後日本が残してきたものには素晴らしいものがあるのは事実です。しかし私たちがそれらが育つ土壌をちゃんと作ってきたかというとすこぶる疑問なわけです。


例えば、一人の優秀な官吏が生まれる背景には、親や教師や無数の優れた友人たちの存在があったはずです。一つのエクセレント・カンパニーが生まれる陰には、100の中小企業があるはずです。労働組合が機能するためには、何よりも末端の組合員の意識が高くある必要があります。

そのための政策なり、生活における実践なりは十分に行われていたのでしょうか。そりゃあ30年位だったら、何とかなります。しかし、高レベルを60年間維持するとなると、ちょっと話は違ってきます。


実は戦後、日本の高度成長を担ってきたのは、戦前の教育を受けた人たちです。例えば、昭和5年生まれの人が20歳のときに就職して、60歳で退職したとすると、この期間は昭和25〜65年、つまり、ちょうど働き盛りの期間が高度成長の時期に一致するわけです。

そして彼らが引退した後、バブルを経て、日本経済は停滞期に入ってしまいます。それからの主役は、戦後教育を受けた人たちです。


もっとも、バブルが起きてその後始末に失敗して長期不況に入ったというのは金融政策が主要因であって、教育は関係ないという見方もあります。それはそれで、正しいかもしれません。

しかしそれでも、戦前世代は、遺伝子の伝承に失敗したといわざるを得ないと思います。厳しい言い方をすれば、自分の子供や後進の育成を放棄して、経済的成果ばかりを追求していた結果だということです。


彼らの子供たちは、紛れもなく彼ら自身の子供たちですが、似て非なるものです。まるで放射能でも浴びたように、戦後教育とマスメディアの影響を身体一杯に受けてしまいました。

戦後教育を受けた世代が主役になってから、日本はすべてにおいておかしくなってしまいました。下々の民がこうなのですから、その上にまともな政治が花開くはずがありません。

結果は皆さんご存知の通り、無人の野を行くごときの小泉首相とその一派の快進撃です。


今こそ私たちは、あるべき表の世界の建設に乗り出さなければいけません。しかしそれは、土壌作りから始めなければなりません。大量の枯葉剤が撒かれた不毛の大地を、元の肥沃の土地に戻すまで、頑張らなければなりません。なんだか、気が遠くなってきました。


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何かご参考になりましたらは、ぜひこちらを。



この記事へのコメント
はじめまして。
以前別エントリーでトラバさせていただいたbanabunaと申します。

>土壌作りから始めなければなりません。大量の枯葉剤が撒かれた不毛の大地を、元の肥沃の土地に戻すまで、頑張らなければなりません。

おっしゃる通りだと思います。
おそらくほぼ同じ気持ちで過去に駄文をブログに書いたことがあります。
http://blog.goo.ne.jp/banabuna/e/75a206f345cf75d1a43e99581bcd2efa

放射能や枯葉剤で破壊された自然に日本の社会を例えるのは、言いえていると思います。実際環境保全に携わっている身として、その類似性を強く感じます。

環境保全というのは突き詰めれば、人の精神や伝統を含めた「風土」の保全こそが大切なのだと思います(かつての南方熊楠がそうしたように)。

今大切なのは、マイノリティーになってしまった日本の良心や伝統を絶滅させないことだと思います。そして冷静に残すべき日本の資産を将来に生かす算段を考える時です。

正直、あまりに汚染が進んでしまった土地はもうある程度あきらめて、まだ健全な土地の活力を高める方に労力を集中したほうが良いのではないかとも思っています。

問題はそれを誰がどうやってやるか、ですが。
Posted by banabuna at 2006年08月16日 13:13
はじめまして、banabunaさん コメントありがとうございました。お返事が遅くなりまして申し訳ありませんでした。

あれ以来、貴ブログは大変気に入っています。記事はほとんど読ませていただいています。

ご紹介いただきました記事についてですが、その点では私も確かに引っかかる点がないでもありません。

いや、っていうか、大有りなんですけどね。本来、失われたものは二度と戻らないと考える方が健全な庶民感覚でしょう。

しかし、現実の変化が余りに急速なので、精神のより所を持たず、徒に現実を追認するのみだと、我々はどこまで流されるのかわからない、という恐怖のようなものはあります。


これはエコロジー思想にも通じると思うのですが、自然環境は我々を束縛するものであった、と同時に、我々を守ってもいたということがあります。

同じことが伝統に対する態度にも言えますね。


だから私は、教育勅語とか、国家神道の復活とか、そう言うレベルの復古には余り興味がありません。

庶民レベルの健全なモラルが復活することを期待しているのです。それこそが、力のない庶民が権力に対峙できる唯一の方法だと思うのです。

権力が腐っているのは昔からです。でも庶民には庶民の誇りや意地があった。それがなくなって、まるで餓鬼の群れのようになってしまった。それが非常に悲しいのです。

だから、このままでは日本は滅びると真剣に心配しています。
Posted by 非国際人 at 2006年08月18日 22:33
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