2005年09月08日

たいした話じゃないと言うのか



あれほど、自然の威力をまざまざと世界中に知らしめたハリケーン「カトリーナ」であったが、それによる経済的損失は甚大なものになるだろうと思いきや、実はそうでないらしい。

「アメリカざまあみろ」のみなさん、残念でした(笑)

極東ブログ カトリーナ被害を経済面からのみ見ると

 先ほど朝日新聞記事”排水作業が本格化、死者1万人説も 米ハリケーン被害”(参照)を読んだ。標題からも想像以上の被害が伺われ、痛ましく思う。すでに各所から批判されているように人災といった側面もあっただろう。
 今回の災害の全貌はまだわからないが、その経済への波及についてはある程度推測されつつあり、四日付のワシントンポスト”Disaster Economics(災害の経済学)”(参照)が扱っていた。一読して、やや意外な印象を受けた。印象的なのは最初の段落の最後にある次の一文である。



The truth is that natural disasters disrupt economies surprisingly little.


 米経済への波及は少ないというのだ。これは今回の災害へのコメントというより、巨大な経済を抱える国家の一般論的な認識らしい。


In a huge economy, the destruction of even an entire city's worth of capital stock represents only a modest financial blow, however great the loss of communities and memories.


 人的な被害については回復できないことがあるが、経済の側面に限定して見るなら、一都市の壊滅も国家経済にはそれほどの影響はもたらしえない。記事にもあるが、ニューヨーク証券取引所の時価総額(昨年九月)は十七兆八千億ドル(約千九百六十兆円)であり、現在推定されているハリケーン被害額をこの株式相場に相当させれば、〇・六パーセントの降下である。
 それはそうなのかもしれない。が、私の印象としては少し奇妙な感じがしないでもない。また、いろいろ想起されることもある。逆に株価の変動というのは米国の数都市を吹っ飛ばすほどかなとも思うが、よくない連想ではある。
 いずれにせよ、ワシントンポストが指摘しているように、今回の災害の経済面での波及は一年程度で吸収されるうるものとみてよさそうだ。つまり、これによって米経済の凋落が始まるといったことはない。
 これに続く話では、むしろ、災害を契機に経済は強化される面が指摘されている。今回のケースでは米社会は石油の浪費を減らす方向に進むべきだったのかもしれないが、この点については冷静に考えるとややがっかりするような対策も出ている。いずれにしても、規模の面からすれば限定的ではあるのだろうが。
 現段階での最悪の事態とはなにかという点についてワシントンポストは、米国民が経済の自信を失い、消費にためらいが生じ、それが引き金となって景気後退するという点をあげている。が、それはないだろうともしている。


The worst case is that Americans lose confidence in the economy and sharply rein in their spending, triggering a recession.


 理由は米経済は失業率も低く健全であるからだというのだ。それもまたそうなのかもしれない。

 私は子供のころ「大草原の小さな家」というテレビ番組を好んで見た。ハリケーンによって被害を被る話もあった。あの話の元気づけと、今日のワシントンポストの記事のトーンはあまり変わらないような印象も受ける。これが米国という国なのかなとも思う。



これ、一瞬ブッシュに対する提灯記事かと思った。前提になってるモデルが、すごく単純じゃない?イラクから軍隊を引き上げたらどうなるかとか、今後の石油価格の動向とか、すべてこのハリケーンの結果から派生する変動要因だが、そういうのはたぶん無視されている。

直感としてはあれだけ大きな被害が出たのだから、経済も壊滅的打撃を受けても全くおかしくなさそうだが、あまりに経済のスケールが大きくなってしまったので、全体から見たらへこむ額など微々たるものになってしまうらしい。しかし、前向きだねえアメリカ人って。

しかも、これから復旧活動と(もちろん)問題のあった治水設備の強化のための大規模な土木工事が行われるだろうから、それによる景気の浮遊効果もあるだろう。そうすると当然日本からの輸出も増えちゃったりして。イラクから撤退することになっても十分その穴は埋めてくれる?

亡くなった方には申し訳ないけど、
いいことずくめじゃん。それって。


インフレ懸念?

んー。そっちの方が怖いかも。原油価格上昇のアメリカ国内の物価水準に対するインパクトはどうなんでしょうね。


この記事へのコメント
はじめまして、poppoと申します。移転後のこちらにも同じコメントですが、させて頂きます。

極東ブログさんの「楽観的」な米国経済への軽微な影響論には、実は大きな「穴」があります。

他でもない「カントリーリスク」です。
ブッシュ政権(及びルイジアナ州政府)の今次災害への対応の不手際が深刻であると評価されればされるほど、米国の「カントリーリスク」は高く評価されることになり、米国への投資への大きな足かせとなることが考えられます(特に個人投資家)。
考えてもみてください。相当以前から何度も専門家・機関からの警告があったにもかかわらず対策予算を削減したり、非常時に必要な州兵は海外に多くを送っていたため十分活用できなかったり、と災害対策に無能な政府首脳を頂いているような国に誰が安心して自分の資産を投資できましょうか?
(私の実弟がまさに現在、このようなカントリーリスク評価を某金融機関系列の研究機関でしておりますので、その受け売りです>私のために平易な表現で解説してくれました)。
Posted by poppo at 2005年09月10日 19:36
poppoさま、コメントありがとうございました。
お返事が遅くなって申し訳ありません。

おっしゃる通りだと思います。この論文にはトリックがあります。というか、専門的な経済学の論文には必ずこういうトリックがあります。

それは、「問題になっている以外の条件をすべて不変とみなす」ということです。

この場合、カントリーリスクは外生変数としているので、経済学の狭い世界では全く問題ないのです。しかし、予想としては、肝心な問題を捨象しているので全く役に立ちません。

でも、経済学に疎い人はそんなことに気づきません。だから、目を引く結論だけを強調して庶民の目くらましに使うのですね。

ただ、私はこのカントリーリスク論もどうかなと思う点があります。

それは、このカントリーリスクを評価するのが誰だということです。それは市場参加者が決めるというのが答えですが、具体的にはソロモン・ブラザースなどの大証券会社でしょう。

昨今金融機関の独立性などと言ってもきわめて怪しいものがあります。特にアメリカ系の金融会社は政治的に動くことも考えられます。意外と、また日本政府が国債を買い支えるかもしれません。考え過ぎでしょうけど、そのための布石としてのこの記事を流したということも十分考えられますね。
Posted by 非国際人 at 2005年09月13日 05:35
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