2005年11月22日

日本にとってのAPECとは何なのか?



ご存知かと思いますが、APECというのはアジア太平洋経済協力会議という意味ですよね。いろいろとネットの記事を追ってみたのですが、このことについての正しい認識がされていると思える記事がほとんどありません。もしかしたら確信犯でミスリーディングを誘っているのかもしれないと暗澹とした気持ちにさえなってきました。

ところで先日、アクセスが少ないなどと身のほど知らずの不満を申してしまいましたが、それを気にして紹介してくれるブログさんがあったりして、週末もそこそこの人が読みに来てくださいました。コメントもいただきまして大変ありがとうございました。

でも週末は私、家族サービスに徹しておりまして、ブロガーとしてほとんど機能しておりません。申し訳ございませんがいただきましたコメントにはこれからお返事をつけさせていただきます。


ところがフジモリ氏の件ですが。その後、全くニュースが入ってきません。私もいよいよ記事の書きようがありません。

そこで気を取りなおして国内に目を転じると、まずブッシュさんが来て、APECがあって、それからプーチンさんですね。


ブッシュさんですが、予想通り何も目新しいことをしないで通りすぎていきました。日本滞在時間23時間と、まるで国際線のトランジット並みの扱いですが、中国にはもっとゆっくりご滞在されるとの由。一体何をご相談されるのでしょうか。

まあ日本は気心の知れた純ちゃんやら平ちゃんやらが仕切っていますので、特に話すこともなくて、まあ素通りするのも何だから、という事だったのだろうと思います。

米軍再編問題は、もうすでに何年も前から決まっていたことが具体化しただけの話なので、首脳レベルの話題ではとうになく。日本国内で騒いでいるのは単に日本政府と国民間の意思の疎通の問題であって、今更蒸し返されても困ると言うところでしょうか。この件についていろいろ不満をいう人はいたはずですが、そういうときに限って思いっきりスルーするマスゴミの大人過ぎる対応には言葉もありません。

中国に対して日本と仲良くしてくれとメッセージをされたそうですが、んなもん日本国民向けのリップサービスに決まっているじゃないですか。それとも日本政府はアメリカに日中関係改善のため何かしてもらうことを本気で期待しているのですか。

バッカじゃねーの。本当にこの国は独立国なんか。もうそんなこと本気で思っているんだったら、外務省解体して対ロシアも対ペルーも全部アメリカにやってもらえ。それこそ小さな政府への第一歩じゃねえか。

ということで、大切な同盟国日本にすらこれだけ駆け足の滞在しかさせてもらえないほどAPECというのは大切な会議なのであります。

ところが、報道されたことと言えば

◆鳥インフルエンザ対策
◆六カ国会議の評価
◆相変わらず韓国は生意気だった
◆小泉首相、我が道を行く
◆ペルー大統領と立ち話


だ・か・ら、経済協力会議だって言ってるでしょ!もちろん鳥インフルエンザも緊急の課題ではあるのだけれど、本題は経済の会議なわけです。もっとも各国首脳ともいろいろ思惑があるから、自分の都合の良い話題に話を持っていこうとするのは仕方がないのですがね。でも本題は本題でちゃんと話が進んでいるわけで、それをちゃんとフォローするのがマスコミの役目でしょう。

で、誰も話題にしてないから書きますが、今回の会議では「釜山ロードマップ」というものが承認になっています。これは、APEC域内の貿易、投資の自由化目標に対する中間評価報告書という性格をもっているそうなのですが、これを承認したということは、これから加盟国はこれに基づいて貿易、投資の自由化をしなければならないということです。

ちなみにこのことを具体例まであげて真面目に論じていたのは意外なことに読売、次に毎日でした。朝日日経は気持ちはわかるが、それと今回のAPECの意義とは別でしょう。産経は逝ってよし。見方によっては非常に悪質なものを感じます。やはりさっさとホリエモンに買われてしまうべきでした。


いいですか、自由化しちゃうんですよ。当たり前のように言ってますが、貿易も投資も完全に自由化したら国によってはどんなことになるか想像できますか?

だからどの国も、自国の得意分野については自由化して欲しいし、不得意分野については自由化を一年でも遅らせて欲しいと思って、虚虚実実の駆け引きをしていると言うのが、この会議の実態な訳です。ま、エライさんばかりの会議なので、多分に儀礼的な部分はあるでしょうが。

だから日本だって、鷹揚に構えているようですが、それこそ死活問題となる分野もあるわけです。しかしそんなことは全然報道されない。韓国の大統領が北朝鮮問題を無理やり共同宣言に入れようとして(言外に)相変わらず馬鹿なことやってるなあとか、それこそどうでもいい報道ばかりしている。


それから中国とも会ってもらえらなかったんですよね、小泉さんは。韓国とはただの「面談」だし。

面白かったのはブロガーの政治的立場によって、このことの評価が180度違うということです。「日本はますます孤立した。これはエライことになった」という立場もあれば、「韓国とは向こうの顔を立てて会ってやった。中国とは別に会う必要もない」という方もいて、なかなか興味深かったです。

ちなみに朝日は大体どんなことを書いても想像できるから省略するとしても、日経は、水面下でずいぶん打診したけど会談には至らなかったという無念さをけっこう滲ませてました。産経は全く触れず(笑)

でも私は思うんですけど、いつまでも中国に対して意地を張っていると、夢にも思わなかった「米中による日本の挟み撃ち」が本当に現実のものになってしまうのではないかな。いや、もう現実になってたりして。

中国経済が日本経済に依存している以上、日本と中国が対立して損をするのはただ一方的に中国なのだいう論が最近流行のようなのですが、一体これを言い始めた人はどこのどなたなのでしょうか。どうして中国にとっての選択肢が日本しかないと主張されるのか、私の鈍い頭ではさっぱり理解できません。日本と中国を対立させておいて、その隙にアメリカやロシアが中国側についてしまったら、それこそ第二次大戦時のスキームの再現になると心配している私は心配性に過ぎるのでしょうか。

それから、すでに中国に進出してしまった企業や個人などの立場はどうなるのでしょうか。「運が悪かった」の一言で済ますつもりですか。それとも得意の「自己責任」でしょうか。中国のバブルが崩壊して一番甚大な被害を受けるのは他ならぬ日本であるにもかかわらず、それでも面白がって囃したてますか。中国のバブルが遅かれ早かれ潰れるのでしたら、早急に対策を考えるべきではないですか。


そのことに関連するかしないかわかりませんが、こんな記事を見つけました。

中国、チリとFTA締結 米の裏庭に“くさび”

 【北京=福島香織】国営新華社通信によると、中国の薄煕来商務相とチリのウォーケル外相は十八日、韓国・釜山で両国の自由貿易協定(FTA)締結に調印した。中国が南米とFTAを結んだのは初めて。経済の緊密化と安全保障や外交をセットにした中国のFTA外交は、東南アジア諸国連合(ASEAN)に続いて米国の裏庭、南米にも迫りつつある。

 今回のFTAは昨年十一月、胡錦濤国家主席がチリを訪問した際に交渉を開始。来年七月から貿易関税の引き下げが実施され、十年内のゼロ関税を目指す。昨年の両国の貿易総額は約五十四億ドルで、前年同期比52%増。その大部分がチリの銅が占める。今回のFTA締結で、チリは農産物の対中輸出拡大を、中国は家電など工業製品輸出拡大を期待している。

 南米経済は米国と密接な関係がありチリとのFTAは米国が先行。しかし米国が主導する米州自由貿易地域(FTAA)は十一月、ブラジルなどの反対で頓挫しており、反米を掲げるベネズエラは中国と急接近中だ。国際時事問題紙・環球時報(七日付)は「米国は裏庭の失火を心配している」と最近の中国の南米接近ぶりを論評している。微妙な時期のFTA締結は中国のASEANにおけるプレゼンス強化と同様、対米戦略的な意義も小さくなさそうだ。

ほーら言わんこっちゃない。フジモリ問題解決の鍵を握ると思っていたチリがここまで中国に接近していたとはね。実は日経にはこんな記事が載ってました。

チリ外相が来日中止
 チリのウォルケル外相は10日から13日まで予定していた来日を中止した。在日チリ大使館が8日午前明らかにした。チリの警察当局は7日、同国入りしたペルーのフジモリ元大統領の身柄を拘束しており、大使館は外相の来日中止の理由を「フジモリ問題に対処しなければならなくなったため」と説明している。

 ウォルケル外相は当初、日本訪問後に韓国・釜山で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席する予定だったが、こちらへの参加も中止するかどうかは不明。 (16:02)


APECのスキームを利用して、アメリカが中国の裏庭、東南アジアを経済的に支配するのかと思ったら、逆のことを中国にされている。この産経の記事は、中国がアメリカの足元を掘り崩すという、中国脅威論のバイアスが入った書き方をしているけど、私に言わせれば、アメリカが東南アジアにおけるステイタスを中国に追認してもらう代わりに、南米における中国の進出をある程度許そうっていう、いわばWin-Winの関係を築きつつあるんじゃねーのって感じがします。

そして日本はまた60何年か前と同じように、世界の孤児となっていくのかも知れません。あ、ていうか属国だから主体的に何かをする必要など始めからなかったのかもしれませんが


最後に、思わず笑ってしまったこの記事を。この毎日らしい、奥歯にモノの挟まったような言い方が、なんとも言えず素晴らしい。始めからケンカ腰の無骨な朝日と比べて、なんて奥ゆかしいんでしょう。

<小泉首相>独自の「日中友好論」展開 APEC全体会議

 【釜山・伊藤智永】アジア太平洋経済協力会議(APEC)の21カ国・地域の首脳がそろった18日の全体会議で、小泉純一郎首相は議題と関係なく独自の「日中友好論」を展開した。中国に胡錦濤国家主席との会談を断られたが、胡主席も列席する国際会議の場で、一方的に自分の立場を主張してしまう政治パフォーマンスだった。
 「全体会合で、皆の聞いてる前で、私が発言したんだ」。18日夜、同行記者団が盧武鉉(ノムヒョン)韓国大統領と会談した感触を尋ねたところ、小泉首相は質問をよそに、全体会議での発言について約10分間、身ぶりを交えて熱弁を振るった。
 米中タイ3カ国の冒頭発言後、各国数分ずつ順に発言。小泉首相は議題の経済問題を外れ、唐突に日中関係を論じた。
 「一つの意見の違いとか対立で、全体の友好関係を阻害してはならない。中国、韓国と政治的首脳の交流は途絶えているが、他の関係は良好だ。どんなに批判しても結構だ。私は何らわだかまりを持ってない」
 ブッシュ米大統領、プーチン露大統領の来日について紹介。ペルーのトレド大統領と「フジモリ問題」があっても握手したことなど、円卓を囲む各首脳との関係を引き合いに持説を強調。中国の会談拒否を当てこするかのような論法だったが、会議後、何人かの首脳から「いい話だった」と声を掛けられたという。
 胡主席は反論できず、議長の盧大統領も聞き役に回るしかない状況。小泉首相は記者団に「してやったり」の表情で高揚感を隠さなかった。2日間にわたるAPEC首脳会議の全体4時間半のうち、小泉首相が発言したのは、この時と鳥インフルエンザ対策を述べた2度だけで、計10分足らず。「日中友好演説」が、APEC外交のハイライトだった。(毎日新聞) - 11月19日20時19分更新

しかしこの記事を読んで、やっぱり小泉首相は素晴らしいと思ってしまうブロガー諸氏がかなりいらっしゃるんですよね。もうマジで日本はお仕舞いかもしれません。


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ちょっと心配になった人


《追記》外務省のサイトを参照すればいいのですか。なるほど。しかしかえってモヤモヤ感が募りますが・・・
この記事へのコメント
こんにちは。
大変おもしろい考察だと思いました。
中国・韓国に対して意地を張ること
だけが「外交」だと思っている人々が
最近は特に多いので。
Posted by 虎哲 at 2005年11月22日 10:36
いつもお世話になっております。
ブッシュの任期が終われば、次はヒラリー率いる民主党政権になる可能性が高いと思われます。
そして、才媛ライス女史は立候補しない事になっております。

近代史を紐解けば、日本をアメリカ攻撃に踏み切らせる謀略を仕組んだのも米民主党、2発もの原爆を本土に落とさせたのも米民主党です。

最近で言いますならば、クリントン政権が支那に擦り寄りつつ日本の国力を削ぐのに終始した事も記憶に新しいです。

即ち、ブッシュの任期3年余りで、我が国はクリントン政権の時と同じく米中・南北朝鮮の包囲網に苦しむ可能性が高い訳です。
非国際人さんの仰っている事は、決して絵空事ではありません。
毎度の鋭いご指摘、恐れ入ります。
Posted by 諸行無常 at 2005年11月22日 14:15
>虎哲さま
楽しんでいただいて光栄です。
イヤーそれにしてもこの話題は酷かったです。APECで検索したら中国韓国の悪口ばかりでうんざりしました。まるでこの二国しか出席してなかったみたいでしたから(笑)

>諸行無常さま
共和党もかつてのキッシンジャーのようにポーカーフェイスで平気で同盟国を裏切りますから油断もすきもありません。
それからブッシュも最近元気がありませんから、中国に対してとんでもない妥協とかしそうでとても気がかりではあります。
Posted by 非国際人 at 2005年11月23日 04:10
コメントつきのTBありがとう!私の記事にも負けず貴記事も辛口ですなぁ〜
楽しく読ませてもらいました。今後もよろしく。
小泉さんは実行力はあるが、説得力はゼロの人。
外交は実行力ゼロでも、説得力100%が良い。
Posted by hontino at 2005年11月23日 09:33
>hontino様
んー私の言葉はちょっとケンカ腰なのでもっと上品にできないかなと思うこのごろ(笑)
なるほど、実行力はあるが、説得力ゼロ。言葉は単純ですが、無茶苦茶きびしいですね。勉強になります。
Posted by 非国際人 at 2005年11月23日 18:53
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